ハサミ選びの知識
長さ選び
理美容で使用されるハサミは、一般的に5インチ(inch)から、0.5インチごとに7インチまであります。
つまり、「 5.0 、 5.5 、 6.0 、 6.5 、 7.0 」の5種類と考えてください。
※ 稀に 4.5 、 8.0 、 5.8 、 6.25 inch などもあります。
※ 1inch = 2.54cm

では、長さ選びのポイントは、何なのでしょう?
それは、カットする髪の長さに由来します。
■ 女性客には短いハサミ
■ 男性客には長いハサミ
と覚えて頂くと解りやすいです。
「女性客には短いハサミ」の理由
女性向けのカットには、取り回しがしやすく、手にすっぽりと収まるようなハサミが好まれます。長いと刃先がブレたりして繊細な作業がし難いというのが一般的な理由です。
「男性客には長いハサミ」の理由
短いハサミでも技術的には、問題ないが、カット面積も小さくなるため、刈り上げ作業などが多い男性の場合だと「カット面積が小さいと時間がかかしまう」というのが一般的な理由です。
基準となるカットシザーの長さ
- 女性比率が高い場合 = 5.5インチ
- 男性比率が高い場合 = 6.5インチ
となりますが、一般的には、両方対応できる6インチが主流です。メインとは別に刈り上げ用として6.5~7.0インチがあっても良いとされています。
ハンドル選び
ハンドルは、大きく分けると「オフセット」「メガネ」の2種類になります。以下がその特徴です。

オフセットの特徴 - 母指用の穴と薬指用の穴の位置に変化がある -
○ 持ちやすい
○ 開閉しやすい
○ 安定させやすい
○ いろいろなハンドルのデザインがある
※ オフセットで慣れると、メガネは違和感を感じやすい

メガネの特徴 - 同じ大きさの指穴が平行に並んでる -
○ 自由度が高い
△ 持ちにくい
△ 安定して開閉させるのが難しい
△ いろいろなハンドルのデザインはない
※ メガネで慣れると、オフセットでも違和感が少ない
「自由度が高い」とは、色々なカット技法に対応し易いという意味です。つまり、より洗練された技術を習得されたい場合は、メガネの選択がベターです。
事実、一流の美容師さんは、メガネ率が高いと言われています。
正刃 or 逆刃 選び
セニング = スキバサミ。
ソギバサミとも呼ばれ、その場合、漢字では「削ぎ鋏」と書きます。
「セニング = thinning」とは、「間引く、減らす」という意味合いです。毛のボリュームを調整するような使い方で用いられます。
セニングは、櫛刃(くしば)と棒刃(ぼうば)を組み合わせたハサミです。 この櫛刃(くしば)と棒刃(ぼうば)のどちらが上にくるかで、正刃( せいば )と逆刃( ぎゃくば )という種類に分けられます。
正刃というのは、持ったとき上の刃が櫛刃(くしば)のモノ。開閉すると、棒刃(ぼうば)が動刃となります。
逆刃というのは、その逆です。上の刃が棒刃(ぼうば)のモノ。開閉すると、櫛刃(くしば)が動刃となります。
これらを踏まえてセニングの選ぶポイントは、
・「正刃」or「逆刃」
・「カット率」
の2点となります。
「正刃」と「逆刃」のどちらが良いのか...というと
実は、どちらにも一長一短あり、どちらが良いという概念はありません。
例えば、
「逆刃のほうが内側を取ることができて、ラインがでなくていい」
「正刃のほうが内側を取ることができて、ラインがでなくていい」
というように、全く違う意見が存在します。つまり「扱う人の技法による」ということです。
正刃・逆刃どちらも使うので2丁持つという方もいらっしゃいます。
1丁で両方の役割を担わせたい方は、メガネのハンドルを選び、ひっくり返し使用することで、「正刃」「逆刃」を使い分けるという効率的な方法もあります。
この1丁で正逆両方使うことを目的にメガネハンドルを購入する際は、「指かけ」を両方つけるのを忘れないでください。
ちなみに、割合としては、「正刃の美容師さんが圧倒的に多い(推定8割)」です。
カット率 選び

カット率は、割合(パーセンテージ)で表されます。
例えば、100本の毛をセニングで切った時、20本切れればこのセニングはカット率20%です。
しかし実際には、カット率20%ピッタリ、という事は、ほぼありません。
21%の場合もあれば23%の場合もあります。それでも購入する際に表記だけを基準にすると...
・カット率15%
・カット率25%
・カット率20~25%
・カット率20~30%
・カット率15%
・カット率30%
・カット率40%
・ウエットで30%
・ドライで20%
・縦に入れると10%
・横だと20%
といった具合に、とてもアバウトな表記をされます。
正直なところ、それは、使い方によって違うもので正確に測ることができない感覚の世界です。
しかし、カット率20%と言われて購入したセニングが明らかにカット率40%だったりという事もあります。
メーカーがカット率20%と公表していても、 実際には、そのとおりでない場合も多々あるわけです。
また、研ぎ方によってもカット率を変えることも可能です。セニングのカット率とはそういうものなのです。
もし、そういう事を極力避けたいならば、信頼できるハサミ屋さん、研ぎ師さんと仲良くしておくと良いと思います。
そういった方なら
「メーカーは30%ということですが、私の感覚ではカット率20%です」
「このセニングが20%だとしたら、こちらのセニングはもう少し取れるのでカット率25%ですよ」
「カット率が少ないとラインが出なくて失敗が少ないですが、仕事が遅くなりますよ」
など親身なアドバイスを貰えると思います。
しかし、いくらアバウトとはいえ、ある程度の目安があります。
- ・カット率10%程度
- ・カット率20~30%程度
- ・カット率50%以上

という3種類です。用途に合わせて、この3種類のカット率のセニングを使い分ける方も多いです。
では最初に購入するべき1丁はどのカット率が良いか?
「カット率20~30%」
を選ぶと良いです。
- - 理由 -
- セニングのラインが出にくいから ( カット率が高いほどラインが出やすい )
- 仕事が遅くなり過ぎない ( 低くすぎた場合、何回もセニングを入れるため時間が必要 )
ヌケの良し悪し

ヌケ具合もセニング選びで大事なポイントです。セニングを入れて、ひっかかることがあります。この理由には、「単純に切れない」「使い方が合っていない」などが考えられます。
しかし、新品や研ぎたてなのに「ヌケが悪い」という場合は、「刃付け」がその原因です。
・ 切れ味を重視してヌケについて、あまり考えていない刃付け
・ ヌケの良さを考えた刃付け
があります。刃付け次第で大きく変わる世界です。
いくらヌケが良いという鋏でも、ヌケを悪くすることもできます。またその逆も可能です。 このヌケに関しては、ハサミ選びというよりは、ハサミ屋さん、研ぎ師さん選びになります。
もうひとつ
あまり安いモノを選ばない方が無難です。 安価なモノは、最初からよく切れない。そうなると枝毛製造機になってしまいます。 あの美容室に行くとなぜか、パサついて、枝毛がデキて.....なんて評判になると元も子もありません。 永く使うものだからこそ、是非、お気をつけてください。
貴方様の美容師人生がより良いモノになりますよう祈念しております。